【臨界期】は過ぎたら絶望的なのか?言語学習開始のリミットとは?

英語学習でよく聞く「臨界期」って何? えっ、過ぎたら終わりなの??
……ということで、論文を読んだりして調べてみました。


臨界期とは

臨界期とは

まずは「臨界期」の言葉の意味を調べてみましょう。

りんかいき【臨界期】

発達過程において、その時期を過ぎるとある行動の学習が成立しなくなる限界の時期。

大辞林 第三版

英語学習においてよく言われている臨界期とは、

このくらいの年齢までならスムーズに英語が習得できる! だから早くやろうぜ!

みたいに使われます。

その年齢としては、3歳までとか、7歳までとか、15歳までとか調べると本当に色々出てきます。いったいどれが正しいんでしょう?

そして、それを過ぎたら本当にもう絶望的なんでしょうか?

臨界期は仮説?

さて、この臨界期というのは実は仮説です。

仮説と付くと、ちょっと怪しげです。

まさか、どこかの企業が子供向けに高い商品を売りつけようとして言い出した、なんてことではないでしょうか?

どのような実験がなされ、どんな根拠があって「臨界期仮説」が出てきたのでしょうか?

大変疑り深い私は、「臨界期仮説」について調べてみることにしました。

https://ci.nii.ac.jp/naid/120005892749

色々調べましたが、こちらの論文が個人的には一番わかりやすかったので参考にしました。

「臨界期仮説」の提唱と反論

「臨界期仮説」の提唱と反論

臨界期仮説はLenneberg(レネバーグ)という人が1967年に発表しました。

彼が調べたのは後天性の失語症患者たちです。失語症とは言葉を失ってしまう症状です。

レネバーグは彼らを年齢別に分け、観察しました。すると、年齢が上がれば上がるほど回復が遅いことが分かりました。

これって言語学習にも同じことが言えるんじゃない!?」……臨界期仮説の誕生です。

ちなみに、ここで出てくる年齢は「12歳」です。

忘れてはならないのが、これは「勉強する人」を観察したものではなく「失語症患者が回復する様子」を観察したものであるということです。

なので、もちろんここで「第二言語習得にさらっと当てはめるな!」派が出てきます

でも実際、子供の方が習得早くない?」派も多いです。

そして、様々な研究がされました(一つ一つの研究の詳細は、最初に紹介した論文に詳しく書いてあるので読んでみてください)

例えば、バイリンガルを被験者にして「10歳までに習得した人の発音の方が訛りが少ない人が多いな」という結果が出たものもあります。

一方で、「大人になって学習を始めた人でも、母語話者並みになれた人は結構いるよ」というものもあります。

言語習得でよく出てくる話

言語習得でよく出てくる話

言語習得と年齢に関して、よくあげられる例として「虐待によって13歳まで監禁されていた少女」の話があります。

彼女は警察に保護された後、言語の訓練を受けますが最終的に母語を充分習得することはできなかったそうです。

ただ、こちらについてももちろん事例が特殊すぎるので「(臨界期云々と結びつけるのは)議論の余地あり」とされています。

言語が習得できなかったのは虐待がそもそもの原因になった可能性もあり、また、これは「第二言語習得」の話ではありません。母語の話です。

狼に育てられた子の話もそうです。あれもそもそもの環境が特殊すぎます。


どの年齢が「臨界期」なのか

どの年齢が「臨界期」なのか

最初に「調べるといろんな年齢が出てくる」と書きました。

それは、これまでさまざまな研究・実験がされ、その都度「10歳くらいが境だった」「こっちは7歳だった」という背景があるからみたいです。

区切りはともかくとして、「(第二言語習得における)臨界期はあるよ」派が主張するのは「若ければ若いほどいい」です。

臨界期はあるのか

臨界期はあるのか

確かに、大人より子供の方が何でもすぐできてしまうような気はしますね。

ただ、「臨界期はまだまだ仮説」派も多くいます。

だって、そもそも人間でしっかりした実験なんて……そんな怖いことできませんよね。

5歳で英語を始めようが、6歳で始めようが大した差はないような感じもします。5歳と50歳を比べるのとはワケが違います。

まとめ

まとめ
  • 言語学習における臨界期はあくまで仮説
  • 元となったのはLenneberg(レネバーグ)の失語症患者の観察
  • 臨界期の年齢は研究によって異なるため「これ!」というのがない

学習期間の長さや慣れを考慮すると、確かに早めに英語に触れることはいいことです。遅く始めた人よりは有利になることが多いです。

ですが、今回触れたように様々な意見や研究結果があるので「あー! 10歳過ぎた! もうだめだ!」なんて思わないでほしいんです。

これから頑張ろうとしている子供たちのやる気を削いでしまっていたかもしれない「臨界期」はまだ仮説だということを頭の隅っこに入れておいてください


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