高校入試の英語に【スピーキングテスト】が!? 都立を受験予定なら要確認!
大学入試に導入される予定だった英語民間試験の延期は、記憶に新しいことと思います。結果的に延期になり、ひとまずホッとしたり、「でも『延期』だから実施はするんだ……」と、ため息を吐いてしまう方もいるでしょう。
高校生も大変ですが、実は今、都立高校を受験する中学生も結構ツライ状況に立たされています。
今後、都立高校入試の英語の試験にはスピーキングテストが導入される予定で、すでに着々と準備が行われてきています。実施されるのは2022年度からです。(2020年6月12日時点)
この記事では、スピーキングテスト導入の経緯・スケジュールや概要を分かりやすくご説明します。どのような試験内容になるのかも解説します。
また、この試験実施について懸念されている問題点についてもみていきたいと思います。
スピーキングテスト導入~実施の経緯
そもそも、都立高校の入試に「英語のスピーキングを導入しよう!」ということになったのは
「義務教育期間中に4技能(読む・書く・聞く・話す)を習得することにしてるんだから、全部テストしなくちゃ!」
……というところから始まりました。小学校でも5年生から英語が正式な教科になったり、今、全体的に英語教育が見直されているのです。
そして、高校入試については東京都が早速動き出したのです。
ポイントとしては、現時点では2022年度に「都立高校の」入試を受ける人が対象だということです。他県の高校や、東京都内でも私立の高校に行く場合はひとまずセーフです。今後はわかりませんが……。
スピーキングテスト実施に向けて何が行われてきて、今後どのようなスケジュールになるのか、少し細かく見てみましょう。
これまでの流れ
流れをざっとまとめると、こんな感じになります。
- 2018年
「話すことの評価に関する検討委員会」が設置される
- 2019年5月
試験の実施団体はベネッセに決定
試験の名称は「2019中学校英語スピーキングテスト Supported by GTEC」となった- 2019年11月~12月
プレテスト実施(済)
★11月1日…大学入試 英語民間試験の実施延期決定
★12月17日…大学入試 国語・数学の記述式問題の導入見送り決定- 2020年4月~2021年3月
確認プレテスト実施予定
- 2021年11月~12月
活用開始 ⇒ 延期
確認プレテスト2を予定- 2022年11月~12月
活用開始予定
2018年に委員会が設置され、まずは2019年5月に試験の実施団体がベネッセに決定します。「ベネッセ」と聞いて「んっ!?」と思った人は鋭い! あとでその話もします。
その後2019年にちょっとドタバタします。「大学入試の方の」英語民間試験の実施延期(11月1日)、さらに国語・数学に関しても記述式問題の導入見送り(12月17日)が決定します。
……が、そんな中「高校入試の英語スピーキングテスト」についてはそのままプレテストに進みます。テストの実施は11月~12月に行われました。
そして最後に「確認プレテスト」をして、2021年の11月~12月に本実施だ! ……という予定だったのですが、コロナの影響で延期になりました。本実施は2022年11月~12月予定です。(2020年6月12日時点)
試験実施の際の「密状態」を回避する方法を検討しなければならず、また、それを議論する場がまだ制限されています。そもそも、休校などで授業時間がまともに確保できていないから、というのが理由です。
実施までのスケジュール
ここまでで「プレテスト(2019年実施)」までが終わっていて、今後は「確認プレテスト」「本実施」が予定されています。
先に説明したようにコロナの影響で、予定としては「計画を1年ずつ繰り下げ」ることになりました。
「確認プレテスト」が1と2に分裂しました。確認プレテスト1については、実施はするものの人数は500人程度に減らしていますね。
本来プレテストがおこなわれるはずだった2020年度(2020年4月~2021年3月)は、
「全中学校に問題等を周知するとともに、希望校を対象に端末を貸与し「校内体験版プレテスト」を実施」
を行うようです。
- 英語スピーキングテストの影響を受けるのは、「都内の公立高校を受験する、2022年4月に中学3年生になる人」
- 試験は2022年の11月~12月に実施
スピーキングテスト 試験概要
実施の日程や会場なども確認しておきましょう。
- 【日程】2022年11月~12月の土日祝のどこか1日
- 【会場】都内公立中学校以外の外部施設
- 【受験回数】1人1回
- 【受験料】都が負担予定
東京都教育委員会 参考ページ:
https://bit.ly/2Y2diS3
https://bit.ly/2UM6oOz
スピーキングテストは、英検2次試験の面接のような形ではなく機材に録音する形式です。TOEICのスピーキングテストをイメージするといいと思います。
このようなタブレット、イヤホンマイク、そして防音用のイヤーマフを使用します。
出題範囲は「中学校学習指導要領に準拠した内容」としています。教育委員会が公表しているプレテストの問題や、評価の観点・結果などを見ると具体的なイメージがつかめます。
次は、その試験内容を掘り下げてみます。
スピーキングテストの内容と評価基準
プレテストのスクリプト・回答例・採点基準はこちらのページで公表されています。
⇒ https://bit.ly/2B5Aq9d出題される問題
どのような問題が出題されたのか、ざっとまとめてみました。
- 【Part A】英文の音読 2問
30秒黙読語、30秒で音読。4~5センテンス程度。
- 【Part B】自分の意見を述べる 4問
イラストや指示が都度出てくるので、自分の言葉で簡単に回答する。10秒準備、10秒で回答。
⇒ 理由を述べる必要はない。1センテンスでOK。趣旨に沿っていれば単語での回答でもいい。- 【Part C】見たものをそのまま説明する 1問
4コマのストーリーを正確に表現。自分の意見は特に求められない。30秒準備、40秒で回答。
⇒ 1コマにつき1センテンスでOK。「Then」「Finally」などの接続語をうまく使うべし。これも個人的な意見は不要だが、「主人公になりきって」と指示が出ていたら主語は「I」にしなければならないので注意。- 【Part D】自分の考え + 理由を述べる
イラストはなく、文章でトピックが与えられる。パートBのように「自分の意見」を述べるが、なぜそう思うのかなども説明する必要がある。1分で準備、40秒で回答。
⇒ どう思うのかを1文、なぜそう思うのか理由を2文程度でOK。
採点のポイント
評価は以下の観点で行われます。
- コミュニケーションの達成度(2段階)
- 言語使用(5段階)
- 発音・流暢さ(4段階)
1の「コミュニケーションの達成度」は言われたことに従っているか、ということです。何か喋っていても、的外れな回答だったらアウトです。
2は文法が正しいかどうかです。接続詞をうまく使って順序だてて説明してる感を出すと高得点が狙えそうです。
3は文字通り、正しい発音かどうか・変に間を開けずスラスラ喋れるかどうかを評価します。「私はアメリカ人よ!」となりきって挑みましょう。
「スピーキングテスト」なんて言うから「1」の自分の意見が述べられるかどうかを重視するんだと思っていましたが、よく見ると文法が5段階で一番チクチク見られるようです。
勉強方法に迷ったら、文法重視の勉強でも、ある程度点が稼げます。というか、「スピーキング」という名前に惑わされて文法をおろそかにすると危ないです。要注意。
スピーキングテストへの懸念
ところで、このスピーキングテストですが賛成派ばかりではありません。よくよく調べてみると、公平性等の点から問題が指摘されています。
例えば、以下のような意見があります。
- 録音された音声を、どんな人が採点しているのか明かされていない。採点ミスを検証するシステムもない。
- スピーキングの練習は、英会話スクールなどに通う生徒が圧倒的に有利。家庭の経済状況で差が出てしまう。
- 新型コロナウィルスによる休校の影響で、そもそも授業時間も足りていない。
- ベネッセは過去に個人情報流出事件を起こしているが大丈夫か?
……などなど。
コロナの影響がなかったとしても、専門家から見ると問題点が山積みのようです。
過去の「スピーキングテスト」の事例
2004年度に、岩手県の公立高校の入試でもスピーキングテストが導入されたことがありました。
民間委託などはされず、各高校の教員が面接形式で採点を行いましたが、生徒・教師の負担があまりに大きく、現在ではスピーキングテストは廃止されています。
負担が大き過ぎるがために廃止したスピーキングテストを、今度は正体不明の採点者に任せるなんて、受験生としては納得がいかないのではないでしょうか。
まとめ
日本の英語教育が見直されたことで、4技能をバランスよく習得することが重視され受験生に求められるものも変わってきました。
都立高校を目指す受験生たちは、スピーキングの練習も必要になってきます。
新型コロナウィルスのおかげで……と言うと不謹慎ですが、試験の実施は1年間延期され2022年度からとなりました。
この1年の間に、問題点として挙げられているものが解決されればいいなと思います。