「筆記体はネイティブも使わない」は本当? 英語の授業で習わなくても大丈夫?
メッセージカードやレストランのメニューではまだまだよく見る英語の「筆記体」ですが、自分では書けないという方も最近は多いかと思います。
現在ではアメリカにおいても「そんなの使わないよ」派が多い筆記体ですが、
「筆記体、読み書きできなくても本当に大丈夫?」
「なぜ多くの人が筆記体を使わなくなったの?」
「必要かどうかはともかく、なんだかカッコイイから書けたらいいなあ」
……といった、筆記体にまつわるちょっと気になることをまとめました。アメリカの大学を卒業した筆者の体験談とともにお伝えします。
筆記体とは
筆記体は英語でcursiveといいます。ブロック体の方はprintといいます。
「write in cursive(筆記体で書く)」「write in print(ブロック体で書く)」のように使います。
筆記体はブロック体のように一字一字書くのではなく、単語ごとにつなげて書いていく文字です。紙からペンを離さずシュルシュル~ッと書けるので比較的速く書くことができます。
この後詳しく説明しますが、昔は日本でも英語の授業で筆記体を教えていました。今は教えないので筆記体の文字を見ても何なのか分からないという人が多いです。例えば…
このあたりは何事かと思うのではないでしょうか(笑)
左から大文字の「G」と「Z」です。いい感じのフォントが見つからなかったので私が書きました。
私も普段筆記体を書かないので綺麗ではないかもしれませんが、なるべく「しっかり」書きました。書きなれている人の字はもっと綺麗だったり、逆に癖が強くて読みづらかったりします。とくに大文字は人によって差が出やすい印象です。
私の母も筆記体を書きますが、「大文字の筆記体は難しいので、ブロック体を混ぜて書く」と言っていました。
筆記体に馴染みがなくても分かりやすいのは、小文字の「x」「y」など、数学でよく目にする文字でしょうか。xはブロック体だと×(掛け算)の記号とごっちゃになってしまうので筆記体を使いますね。
単語や文章であれば前後で何となく察することができますが、単体で見ると解読の難易度が上がります。
筆記体の歴史
そもそも筆記体は、速く書くことができたため普及した文字です。その後、タイプライターの登場により「タイプした方が速いじゃん」となったため廃れていきました。
現代ではパソコンやスマートフォン等の端末を携帯することも一般的になり、紙とペンで文字を書く機会そのものが減ってきていますね。
日本の学校での「筆記体の扱い」
日本では少し前まで、中学校で筆記体を教えていましたが、最近では教えない学校も多いようです。
これは学習指導要領の改訂によるもので、筆記体の扱いが「必須」から「教えても教えなくてもいいよ」に変わったためです。
筆者が中学生の頃には、「自分の名前を筆記体で書いてみよう」「a~zまで繋げて書いてみよう」と、筆記体は触れる程度に登場しました。ただ、それだけなのでテストにも出ませんし、その後授業で使うこともありませんでした。
そもそもアメリカ人も「使わない」という人が多い上に、タイピングの方が速いならわざわざ学校で教える意味がないということかもしれません。
アメリカ、イギリス、その他ヨーロッパ諸国では?
アメリカでも以前は小学校で筆記体の授業がありましたが、今は日本同様「どっちでもいいよ」という扱いです。ざっと調べた感じだと、州や学校によるようです。
筆記体は、英語が母語の方たちにとっても「読みにくい」ものらしいです。筆記体を小学校で教わった世代でさえ、「他人の書いた筆記体は(癖が強すぎて)読めない」ということが起こります。
アメリカで筆記体を使う場面は、パスポートやクレジットカードの署名くらいです。自分の癖が強く出るので、その分偽造されにくいのです。
ただ、他の国では少し異なります。同じ英語圏でもイギリスでは筆記体の授業が必修です。つまり、「筆記体はネイティブも使わない」は実はちょっと間違っています。
階級社会のイギリスでは、「美しい筆記体が書けると教養があるとみなされる」なんて情報もありました。ステータスの一つなんですね。
また、フランスやドイツ、その他ヨーロッパ諸国でも、筆記体を使う人は今も多くいます。
日本とアメリカだけを見ていると筆記体が消えてしまったように思えるかもしれませんが、そんなことはありません。
筆記体は必要か否か
筆記体は書けなくてもそれほど困りません。でも、読めないと困る場面は出てくるかもしれません。
筆記体を使うメリット
筆記体を使うメリットとしては、手書きの時に速く書けるということです。が、これは先に記載した通り「タイピングの方が速い」という人にはメリットにはならないでしょう。速くメモをとれるようになりたいなら、筆記体の練習よりもタイピングの練習をした方がいいかもしれません。
もう一つのメリットとして「スペルを体で覚えることができる」というのがあります。筆記体はブロック体とは違い、紙からペンを離さずぐりぐり~っと動かして書きます。手が動きを覚えているため、英単語のスペルを頭で忘れても、試しに書いてみたらなぜか書ける……ということが起こります。
最近ではパソコンやスマートフォンのスペルチェックが充実し、便利にはなりましたが一方でスペリングに弱い人が増えているそうです。
機会が減ってきたとはいえ、紙とペンで何かを書く機会はゼロではありません。いつでも正確なスペルで単語を書ける方がカッコイイですよね。もちろんスペルを覚えることに関してはブロック体で練習してもいいですが、覚えにくいという場合は筆記体を使って覚えてみるのも一つの手です。
筆記体を知らないと困ること
「筆記体を勉強するなんて時間の無駄だ」という意見もあります。
これに対し私としては経験上、
「おまえは! 筆記体のせいで苦労したことがないから!! そんなことが言えるんだ!!」
と思っています。
最初に書いた通り、私も触れる程度には筆記体を扱いました。でも、「別に覚えなくても大丈夫だから」と言われました。今もネットで調べると「不要」派が多い印象です。私もそれを信じていました。
……が、後に後悔することもありました。
困ったこと 1
まず、高校の頃はじめてTOEFLを受けに行った際、「真面目にテスト受けます」みたいな誓いを筆記体で書かされました。
「筆記体、使うじゃん!!!」と、あの頃他人を信じた自分に憤りを感じながら、必死で筆記体の形を思い出しながら書きました。ブロック体もこそっと混ぜながら書いていたので「これが原因で失格になったらどうしよう」と、テスト中も気になって集中できませんでした。
実際それで失格にはならなかったので、その後もいいかげんな筆記体でどうにかやり過ごしていました。
困ったこと 2
私はアメリカの大学を卒業しています。当然授業は英語で、様々な国出身の先生たちがいます。
そんな私から、日本国外の学校に行こうと考えている人に伝えたいと思います。
年配の先生は、筆記体の使用率が高いよ!!
単純に字の癖が強いときもあれば、ホワイトボード上でかすれて何が何だか分からないときもありました。自身の英語のレベルによっては、文脈からもっと推測できるのかなぁとも思いますが、やっぱり筆記体が全然読めないのは苦労すると思いますよ。
アメリカの大学にもイギリス人の先生はいるし、アメリカ人でも筆記体を使う人はいます。油断しないように!
自分の名前は書けた方がいい
日本では大事な書類にはハンコを押すのが一般的ですが、海外ではあらゆる場面でサイン(署名)を求められます。
パスポートやクレジットカードなど、偽造されては困りますよね。ブロック体だと簡単にマネされて偽造のハードルが下がってしまうので、そんなときは筆記体を使います。
「筆記体、書けなーい」
と言っているアメリカ人も、自分のサインだけは筆記体をササッと書いています。書けないって言ったクセに!!
ブロック体でサインするくらいなら、いっそ漢字を使った方が安全です。どうしても英語でサインしたいなら筆記体を!
筆記体を練習しよう
筆記体は、知らなくて生きてはいけます。海外で日常生活を送るのにもそこまで支障はないでしょう。
ただ、これは「数学の方程式が解けなくても生きていける」というのと同じで、日常生活はできるけど学生生活では辛いものがありますよね。
日本の学校では扱わないかもしれませんが、将来的に海外の学校に行くかもしれない場合は、せめて少しは読めた方がいいです。
実際「書ける」のは自分の名前だけでも大丈夫ですが、書きながらの方が読み方も覚えやすいかもしれませんね。
最後にいくつかおすすめの練習帳を紹介したいと思います。
筆記体の練習帳・ドリル
正しく美しい書き方 小学英語 ペンマンシップ 筆記体
導入にはおすすめです。基本的な筆記体の練習ができます。
美しい英文が書ける 書き込み式 筆記体レッスンブック
筆記体を「美しく」書く練習ができます。コツも教えてくれるのでわかりやすいです。
英語の名文をなぞる〈筆記体〉練習帳
せっかく書くなら有名な文章にも触れてしまおうという、お得な練習帳です。文字の形は基本のものに加え、華やかに書く方法も学べます。
ちょっとしたグリーティングカードも、きれいな筆記体で書けるとかっこいいですよね!