【thou thy thee thine】英語の古語に触れてみよう

日本語にも古語があるように、英語にも古語があります。

Thou art…” “Thou shalt…” のような表現が、洋書や洋画でさらっと出てきて戸惑ったことがある方も多いのではないでしょうか。

今回は、そんな「古い英語」について軽く紹介しています。

「英語の古語って、どんな感じ?」
「細かい歴史は読むのが面倒! ざっくり知りたい!」

……という感じで、なんとなく知りたい人向けです。じっくり味わいたい人は、最後におすすめの本を紹介しているのでそちらを読んでください。


thou thy thee thineについて

いちばん目にする古語と言えばやはり「thou」とその仲間だと思います。
これは「you」の古い言い方で、それっぽく訳すと「汝(なんじ)は……」という感じです。

表にするとこのようになります。

古語
thou
thy
thee
thine
発音
ザウ
ザイ
ジー
ザイン
意味
you
(主格)
your
(所有格)
you
(目的格)
yours
(所有代名詞)

無理やりカタカナで表記しましたが、全部「にごるthの音」で発音してください。

ちなみに、この「thou thy thee thine」は単数の表現(=あなた)です。

複数の表現(=あなたたち)は、「you」または「ye」となります。(yeの方が古いです)

単数・複数・敬称

単数でも敬称(相手が目上の人)の場合はyou(またはye)になることがあります。
表にするとこんな感じです。

(相手が)
親しい人
目上の人
単数
thou
you / ye
複数
you / ye
you / ye

youが全てthouに置き換わるわけではない、というのがお分かりいただけたでしょうか?
(私はこれを初めて知ったとき、「なんでこっちはthouで、こっちは普通にyou使ってるの?」というもやもやがずいぶん晴れた記憶があります)

thyとthine 使い方の例外

thou thy thee thineのthyは所有格、thineは所有代名詞です。
なので、例えば

your brother

thy brother

となります。ところが、

your eye

thine eye

となります。thyではなく、thine。yoursにあたる単語です。

これはなぜかというと、続く単語(ここではeye)が母音で始まるからです

その他の古語

さて、冒頭で紹介した「Thou art…」という表現の「art」ってなんでしょう?
なんとなくお分かりかとは思いますが、「art」は「are」にあたる単語です。主語がthouの時に使います。

この他にも、thouが主語だと動詞が今とは違う形に変化します。
例えば、

have → hast
do → dost

のように動詞に「~st(またはest)」と付いたり、助動詞も

shall → shalt
will → wilt

のように一見なんだかわからない単語になります。古い本を読みながら見慣れない単語に出会ったら、ためしにst/estを外して推測してみましょう。

所有格の使い方といい、thouだけ使い方が面倒です。本当、youになってくれて良かった!!

thou関連以外でも古い言い方(単語)は色々あります。前置詞「unto(toの意味)」とかですね。

英語の古語、本で見てみよう

thou thy thee thineについて、ざっくりルールが分かったところで、実際に本を読んでみましょう。

おすすめは、ずばり聖書とシェイクスピアの作品です。

聖書

まずは聖書
Matthew(マタイ)7-3を、2種類の聖書から抜き出しました。

The Holy Bible (KJV), Holy Spirit Edition
The Holy Bible, English Standard Version
And why beholdest thou the mote that is in thy brother’s eye, but considerest not the beam that is in thine own eye?
Why do you see the speck that is in your brother’s eye, but not notice the log that is in your own eye?

左側が古い方、右側が現代の英語バージョンです。
意味としては「あなたは兄弟の目についているチリには気づくのに、なぜ自分の目の前の丸太に気付かないのか」という感じです。

thou → you となっているのはもちろん、先にご紹介した所有格の使い方にも注目してください。

最初の方の “thy brother’s eye” は(thy=yourなので)”your brother” です。

その後出てくる、”thine own eye” はどうでしょう? ”thine” は “yours(所有代名詞)” にあたる言葉です。
しかし、ここでは “own(=母音で始まる単語)” が次に来ているため、 “thy” ではなく “thine” が使われているのです。現代英語の方は、ちゃんと “your own eye” となっていますね。

シェイクスピアの作品

続いて、シェイクスピアの「オセロー(Othello)」です。こんな感じで、基本はセリフだけで進むので慣れればサクサク読めます。

Othello Act 3 Scene 3
Othello Act 3 Scene 3

Act 3 Scene 3の、イアーゴーとオセローの会話です。

ここのイアーゴーの “you” は複数形ではないのですが、その前にある “My lord,” から分かる通り「敬称」として使っています。

一方で「敬称」の “you” を使っていないオセローは、”I think thou dost(=I think you do).” と返していますね。


キリスト教の話に馴染みが無い場合は、シェイクスピアの方がいいかもしれません。(今でこそ、ですが)よくある流れのストーリーで、分かりやすいです。映画もありますし、お気に入りだったり、知っている話があるならそれが一番です。

学習者向けのシェイクスピアの本は、解説付きのものも多いです。私も大学生の頃「ページの左側が解説」になっているものを読んでいました。


現代英語と古い英語

今私たちが普通に使っている英語は「現代英語」です。
それに対し、古い英語は厳密には「古英語」「中英語」「近代英語」というように時代によって分かれています。昔のものほどドイツ語っぽくて、とても現代英語の知識だけでは読めないようなものになっています。

今回はざっくり「古語」として、初期近代英語あたりをご紹介してみました。
ここで紹介した程度のものであれば1冊なんでもいいので本を読み終えると慣れてしまいます。日本語の旧仮名遣いに触れるのと同じ感覚です。

聖書やシェイクスピアを、そんな角度から楽しむのもいいと思いますよ。


この記事で紹介した聖書とシェイクスピアのオセローは、Kindle版であれば無料で読むことができます。

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Kindleの専用端末もあると便利なので、こちらもおすすめです。


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