【2000時間説】英語習得に要する時間。その根拠は?
2000時間はだいたい83日だよ!
誰の言葉?
「英語を習得するには約2000時間が必要と言われています」
よく見るフレーズですね。
果たして、これは本当なんでしょうか?
そもそも、どこを見ても「言われています」と書いてあって、 「で、誰が言ってるの?」と思いませんか?ソースを出せ! データを見せろ!!
と思ったので調べてみました。
アメリカFSIの情報
アメリカの外務職員局(Foreign Service Institute、略してFSI)のウェブサイトに、ちょっとした情報がありました。
外務職員局というのは、外交官などを養成する機関です。
英語を母国語としている人が、別の言語を習得するのにどのくらいの時間がかかるかをまとめています。
英語に近い言語、例えばイタリア語は24週間で習得できると書かれています。
日本語はどうでしょう?
Super-hard languages!!!
習得まで88週間! 時間にすると2200時間と書いてありますね。
「英語を母国語とする人が日本語を習得するのにかかる時間が2200時間なら、逆も同じくらいじゃない?」
という考えに、なるかなぁ……? SPIの命題を彷彿とさせます。注意すべき点としては、ここは「外交官などを養成する機関」で、これはそこでのデータです。
それから、2200 class hoursとも書いてあります。あくまで授業の時間が2200時間なだけで、それ以外の時間で個人的に、もっと勉強しているはずです。
外交官になるような人たちが頑張って、2200時間(以上)かかるということです。
これを「日本人が英語を習得するには2000時間程度必要!」の根拠とするにはちょっと違う感じがします。
研究データ
検索していると、1万時間の法則というワードも目につきました。
アンダース・エリクソンさん、マルコム・グラッドウェルさんの二人の名前がよく一緒に出てきます。
どんな人たちなんでしょう?
エリクソンは「超一流」と呼ばれる人たちを研究していました。
彼は、ベルリン芸術大学でバイオリンを学ぶ生徒たちを調査しました。
超一流になるであろう最も優秀な生徒たちは、18歳になるまでに約7410時間を練習に費やしていました。
一方、音楽の先生になる道を選んだ生徒たちの練習時間は3,420時間でした。
超一流の人が20歳になるころには、練習時間は1万時間ほどになるでしょう。
このエリクソンの研究をもとに書かれたのが、グラッドウェルの本「天才! 成功する人々の法則」です。
そして、エリクソンの(バイオリンの)調査結果の「一万時間」というフレーズが取り上げられます。
何だって1万時間くらいやればプロになれるよ! と言っています。
「1万時間の法則」ですね。
ただ、エリクソンは「そうじゃない」と言っています。
超一流の人を調べたら大体みんな1万時間練習していただけで、ただ時間をかければいいというものではなく、正しい練習方法が必要だと述べています。
グラッドウェルの言うような「1万時間の法則」なんかないと言っているのです。
エリクソンの本はこちら。
実際はどうなのか
結局、「日本人が英語を習得するのにかかる時間は2000時間」の明確な根拠は見つかりませんでした。
アメリカFSIの情報からひょいっと持ってくるにはいい加減すぎるし、エリクソンの主張は「量より質」だし、グラッドウェルの本を引用するにしても2000時間と1万時間ではあまりに差があります。
いったい2000時間とはどこの誰が言い出したんでしょう?
わからずじまいとなってしまいましたが、エリクソンとグラッドウェルを比べてみたりするのは面白かったので良しとします。
最後に、エリクソンが不満を示しているグラッドウェルの本も紹介しておきます。
アマゾンのレビューでも好評です。
彼がTEDで話しているのを見ましたが、とても引き込まれるような話のもって行き方をします。説明するのがうまい人なんだと思います。
エリクソンさんの論文はネットでも読めるよ~。